親名義の不動産に家賃なしで住まれている方へ
• 親名義の土地に家を建てている
• 親名義の建物で店舗を営業している
• 家賃は払っていないが、親子だから問題ないと思っている
このような「親子間の使用貸借」は非常に多く見られます。
しかし実務上、
親子間の使用貸借トラブルは年々増加傾向にあります。
特に、相続や資産整理の局面で一気に問題が顕在化します。
本記事では、弁護士の実務経験をもとに
親子間の使用貸借の法的リスクと具体的な対策を解説します。
そもそも使用貸借とは?
家賃を払っていない場合、法律上は原則「使用貸借」です。
使用貸借とは
▶ 無償で物を借りる契約
一方、賃料を支払う契約は「賃貸借」です。
親子間の使用貸借の最大のリスク
① 親が第三者に売却した場合、対抗できない
使用貸借は、原則として
第三者に対抗できません。
具体的には、
親が不動産を第三者へ売却した場合
↓
新所有者から明渡請求を受ける
↓
退去せざるを得ない可能性がある
ことになります。
つまり、親との関係性に依存した関係であり、法的に極めて不安定な状態です。
② 交渉材料にされるリスク
実務では、次のようなケースが多く見られます。
• 親が生活費確保のため売却を検討
• 兄弟姉妹から不公平だと指摘
• 相続分調整の圧力
• 経済的援助を求められる
このような場合に、親から、
「出ていってもらうこともできる」という背景を前提に
不利な条件での合意を迫られることがあります。
③ 相続トラブルに直結する
親子間使用貸借の問題は、
相続開始後にほぼ確実に表面化します。
特に、
• 他に推定相続人(兄弟姉妹)がいる
• 不動産の評価額が高い
• 収益物件である
場合は、紛争化しやすい傾向があります。
「親子だから大丈夫」は、
相続では通用しません。
親子間使用貸借の対策方法
① 賃貸借契約へ切り替える
最も安全性が高い方法は、
▶ 適正賃料による賃貸借契約を締結すること
です。
賃貸借契約になれば、借地借家法の保護が及び、
一定の要件のもと第三者に対抗できる可能性が高まります。
注意点
• 固定資産税程度の低額賃料は使用貸借と評価される危険性があります
• 契約書がないと紛争化の可能性があります
• できれば公正証書化が望ましいです
形式だけの契約では不十分です。
実質的に「賃貸借」といえる内容が必要です。
② 家族信託の活用
親の不動産を信託財産とし、
居住している子を受託者とし、受託者が得るべき報酬と家賃とを相殺します。
家族信託を利用すると、その不動産の所有権が子に移るので、親が第三者に売却することができなくなります。
メリット:
• 売却をコントロールできる
• 親の認知症対策(悪徳業者等に騙されるリスクの回避)にもなる
ただし
• 信託契約に則って受託者の業務(親の財産管理業務)を行う必要がある
• 信託は解除可能(解除理由をある程度限定しておくことが必要。)
• 契約設計を誤ると不安定
• 信託口座を作らせることに銀行が消極的
というリスクがあります。
どちらを選択するかは専門家に相談しつつ進めるべきです
「今は大丈夫」が一番危ない
親子関係が円満なときほど、
「うちは大丈夫」
と思いがちです。
しかし、紛争は
• 介護
• 相続
• 資産整理
• 兄弟間の対立
といった場面で一気に顕在化します。
そしてそのときには、
すでに交渉上きわめて不利な立場に置かれていることが少なくありません。
「まだ揉めていない段階」でもご相談ください。
むしろ、その段階こそが最も重要です。
生活や事業を守るための法的備えを、今のうちに整えておきませんか。













