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<DNA鑑定>法律上の親子関係取り消せず、最高裁が初判断 問われる民法777条の現状とは

 

1 今回の最高裁判決の内容
 DNA鑑定で血縁関係がないことが証明された場合、父子関係が取り消されるかどうかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は7月17日、「科学的に明らかであっても、子どもの身分を法的に安定させる必要性はなくならない」として、父子関係を取り消せないとの判断を示しました。

 

 従来最高裁は、全く夫婦の肉体関係が存在しないような客観的事情が無い限り、婚姻中に産まれた子供は父親の子供と推定していました。

 

 本判決も、親子関係に疑問が生じたとした場合でも、民法777条規定により1年経過した後には、例えDNA鑑定で血縁上の父でないとされても、推定される子供との親子関係を否定出来ないとしていました。

 

2 民法777条は何を定めているのか
 民法に言う「父」とは、「血縁上の父」ではなく、婚姻関係にある男女(正確には結婚してから200日経過後、離婚してから300日以内)の間にできた子を「出産した女性の夫」のことです。
 そして、民法777条が1年に期間を区切っている趣旨は、親子関係に疑問があるのであれば1年以内に申し出なさいということです。
 この判決自体は親子関係の安定性を重視した従来通りの判断だと言えます。
 生後1年経過した時点で親子関係が疑われるような問題が生じなかった家庭がある以上、その後血縁上の親子関係が否定されたとしても、それまで安定していた親子関係を否定することは出来ません。ということです。

 

3 問題は、父親の利益を優先するか、子の利益を優先するか
 判決で問題となったのは、「安定した親子関係という利益」を重視するべきか、父親の「血縁上の繋がりの無い子供を育てさせられる不利益」を重視するべきかという価値判断です。
 従来の最高裁判決や、今回の判決によりますと子の利益を重視していると言えます。
 ここで注意しなければならないのは、あくまで「父親の利益か子の利益か」という比較において子の利益を重視しているので、今まで騙してきた妻の罪といった問題はまた別だということです。

 

4 今回の判決の妥当性
 子の利益を重視する判決は、現在の法律の範囲内においては妥当ではないかと思われます。
なぜなら、父親とされた男性の利益を優先すると、本当の父親が見つからない場合(そして通常その場合が多い)に、子供からある日突然父親を奪う事になるからです。

 

5 民法777条の問題点
 ただし、民法777条の規定は明治時代に作られたものです。しかしDNA鑑定による親子関係の証明は当然明治時代には存在していませんでした。今後DNA鑑定がさらに活用される時代において、民法777条の規定をそのまま適用することについて以下の問題点が考えられます。

 

民法777条の問題点
① 通常1年経過後でないとDNA検査や血液型の検査は行わない(1年という期間が短い)
② 血縁上繋がりの無い父親の支払う養育費は不当利得として取り返すことが出来ないという最高裁判例がある(法律上の父親とされると金銭的負担が生じ、かつ回復が出来ない)
③不貞の慰謝料が比較的安い。
という現状があります。

 

 そうなると、子が産まれてから1年経過後に自分の子が実は血縁上繋がりが無いことが判明した場合、
① 親子関係を否定することが出来ない
② 養育費は支払わなければならない
③ 母親に対する慰謝料では到底養育費は賄えない。
 ということになります。

 

 そうなると、父親としては血縁関係がないにもかかわらず「法律上の父」として親子関係が否定されず、養育費も支払わなければならない状態に陥ります。

 

6 立法的措置を含む改善策について
 最高裁でも5人の裁判官のうち3人が補足意見として「立法的措置」について言及しています。櫻井龍子裁判官は「国民の意識、子の福祉、プライバシー等に関する妻の側の利益、科学技術の進歩や生殖補助医療の進展、DNA検査等の証拠としての取扱い方法、養子制度や相続制度等との調整など諸般の事情を踏まえ、立法政策の問題として検討されるべき」と述べています。

 

 このような事態を避ける為に考えられる立法的措置を含む改善案について、上記①〜③の不都合に沿って考えてみると、以下のAからDが考えられます。
A 出生と同時にDNA鑑定を行うことを常態化
B 777条の期間を3年程度に延ばす
C 養育費として支払った金額を妻や血縁上の父親に請求出来る法律に改正するか、判例で認める
D このような事案について母親に対する慰謝料を従来から桁をあげて1000万円単位にする。
ということが考えられます。
Dについては実際に認められたとしても回収の問題があるので、A、B、Cによる解決の方が実効性があるでしょう。

 

 Aについては、DNA鑑定をして父親との血縁上の繋がりがあればより父子関係を強固にしますし、繋がりがなければ、父親にとってはそのような子を自分の子として養育するかの選択肢が与えられますし、子にとっても、血縁上の父を早期に探すきっかけにもなります(子の「血縁上の父親に育てられる」という利益も考慮すべき利益と考えます。)。母親としては反対する理由はないでしょう。反対する母親は何か思い当たる節がある不貞をしている母親だけだからです。

 

 なお、出生前にDNA鑑定することも考えられますが、胎児や母体への危険性を伴うので、これは避けるべきです。中には「夫の子でないことがばれたら産みたくない」という女性もいるかもしれませんが、そのような身勝手な主張は無視されてよいかと思います。

 

 Bについては、現状よりも父子関係が安定するまで時間を要するが、父親の利益に配慮して少し時間をずらすという方法での解決です。
 Cは経済的な点だけの救済になりますので、AやBと同時に改正を考慮すべき内容だと思います。

 

 いずれにせよ、最高裁でも立法的措置に言及をしている以上、民法777条を中心とした「親子(父子)とは誰と誰か」に関する規定は今後改正する余地があると思われます。