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契約終了時のトラブル

更新拒絶・一方当事者からの解約

 

フランチャイズ契約の更新を拒絶されたり、一方当事者が解約した場合には、もう一方の当事者が契約の継続が出来なくなるため、今まで費やした多額の人的、金銭的な投資を無駄にすることになり、多大な不利益を被ることになります。
そこで、契約に定められた方式で手続きがなされたとしても、判例上は、信頼関係を破壊することで契約関係の継続が著しく困難になるなど「やむを得ない事由がある場合」に限り有効とされ、不当な更新拒絶、契約の解約は信義則上許されないと考えられています。
不当な更新拒絶・契約の解約は無効とされ、契約継続や損害賠償が認められます。
判例で更新拒絶・解約が有効になったケースは、のれん料の不払いによるもの(福岡高裁判平成19年7月19日)、ロイヤルティー料および広告宣伝費の支払い遅滞によるもの(東京地裁判平成18年2月21日)、フランチャイジーの売上金の私的流用などの不正計上(エーエム・ピーエム事件、東京高裁判平成11年12月15日)などがあります。

違約金条項の有効性

 

多くのフランチャイズ契約では、フランチャイジーの債務不履行について違約金を支払う旨の条項が設けられています。500万円など一定金額が定められているケースや、ロイヤルティの○ヶ月分といた定めがあるケースもあります。
これら違約金条項の有効性について、争いになるケースがあります。
判例上、違約金の金額、解約に至った事情などを考慮して、現実に発生しうる賠償額と比べて著しく高額な違約金については、公序良俗違反として一部無効とするもの(ノムラクリーニング事件 大阪高等裁平成10年6月17日)、競業禁止条項の目的を達成するのに必要かつ相当な措置である旨を確認した上で、その額については、競業禁止条項によって保護されるフランチャイザーの利益の損害賠償の性格を有する限りで合理性を有するが、これを超える部分は合理性を欠き公序良俗に反する(関塾事件 東京地判平成21年11月18日)、があります。

競業避止義務

 

フランチャイズとは、事業者(フランチャイザー)が、商標などを使用する権利、自己の開発した商品・サービスを提供する権利、営業上のノウハウなどを提供し、これにより自己と同一のイメージで営業を行わせ、フランチャイジーは、これに対して対価(ロイヤルティー)を支払う約束によって成り立つ継続的契約関係です。

 

フランチャイズの特徴は、独自の商品・サービスの提供であったり、営業のノウハウにあるため、フランチャイザーはフランチャイジーに対して、営業上の秘密や内部情報を提供することになります。
そのため、フランチャイジーが提供された秘密や情報を利用して営業を行うことはフランチャイザーとフランチャイジーの信頼関係を破壊するものであり、フランチャイジーが競業することは、フランチャイズシステムそのものを揺るがすことになります。
そこで、一般的なフランチャイズ契約では、競業避止義務や秘密保持義務に関する規定が設けられています。
競業避止義務違反は、フランチャイズシステムそのものを揺るがす重要な違反でありますが、一方で無制限に制約を貸すことは職業選択の自由、営業の自由を不当に制限することになります。

 

そこで、競業避止義務は無制限に認められるものではなく、禁止される場所、禁止される期間、禁止される業務の範囲のいずれかに適当な制限をする場合に限って有効であると考えられます。
一方で、無制限な制約は公序良俗に反して無効となり得ます。
競業避止義務違反の効果として、違反者は、競合する営業を行うことはできないことはもちろんのこと、損害賠償義務(民法415条、709条、不正競争防止法4条)、不正競争防止法上の差止請求を受けることもあります。

競業避止義務に関する判例

 

判例1
甲は、本件契約期間中、以下のような事業や行為を行ったり参加したりすることはできず、また、本件契約の終了または解除後の2年間も同様とする。
①本件契約に基づかず乙の事業と同種又は類似の事業を営むこと。
本件競業避止規定の制限内容は、競業禁止により保護されるフランチャイザーの利益が、競業禁止によって被る旧フランチャイジーの不利益との対比において、社会通念上是認しがたい程度に達しているというべきであり、公序良俗に違反して無効である。
本件競業避止規定が無効である以上、同規定を実質的に担保する機能を持つ本件引継規定も公序良俗に違反する。
(労働者派遣事業FC事件 東京地判平成21年3月9日)

 

判例2
契約終了後3年間の競業避止義務(フランチャイジーの責任地域(岡崎市)において他の同一業態の営業を禁止する)及び当該競業避止義務に違反した場合、解除直近12ヶ月間の店舗の経営実績に基づく平均月刊売上に対するロイヤルティー相当額の36ヶ月分を支払う旨の定めは、フランチャイズシステムの顧客・商圏を保全するとともに、フランチャイザーの高齢者向けの弁当宅配業のノウハウ等の営業秘密を保持するという重要かつ合理的な趣旨目的を有するというべきであり、フランチャイジーが被る営業の自由の制約等の不利益については相当程度緩和の措置が採られていることから、本件競業避止義務規定は、フランチャイジーの営業の自由等を過度に制約するものとはいえず、公序良俗に違反し無効であるとはいえない
(アルファ事件 大阪地判平成22年1月25日)