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為替デリバティブ被害の論点

裁判では以下のような論点が争われます。裁判例とともにご参照ください。

 

適合性原則違反

 

適合性原則とは、事業者は顧客に適合しない勧誘をしてはならないという原則です(金融商品取引法40条)
例えば全くの金融の素人で、手持ち資金も少ない顧客に対して、複雑な金融商品を購入するよう勧誘をしてはなりません。
適合性に違反するか否かは、顧客の知識、経験、財産状況、金融商品購入の目的等によって判断されます(最高裁平成17年7月14日第一小法廷判決)

説明義務違反

 

金融機関には、金融商品のリスクについて顧客に十分説明する義務を負い、怠った場合顧客が被った損害を賠償する責任が生じます(金融商品の販売等に関する法律3条、5条)。特に、近時トラブルの増加を踏まえて金融庁は「デリバティブ取引に対する不招請勧誘規制等のあり方について」を発表し、そこでは最悪のケースを想定した説明や優越的地位の濫用が無いことの説明を十分にすることを求めております。
特に、オプション売りの為替デリバティブ取引については、無制限のリスクテイクになることや、時価評価額が購入時にマイナスになっていることについての説明義務が求められるべきです。
金融機関が説明無を果たしたか否かは、商品の性質、顧客の理解能力等により個別具体的に判断されます。

ロスカットルール適用義務

 

ロスカットルールとは、投資家が一定の損失を被る状態になった場合に、強制的に反対売買により清算をすることをあらかじめ定めておくことです。
ロスカットルールが定められていたとしても業者側にロスカットを行う義務があるのか、ロスカットの条件につきロスカット適用時の為替レートでの決裁を行う義務があるのか、それともカバー取引(業者がさらに他の業者との間で顧客とは反対取引を行っておくこと)の成立を条件とすることができるのかが争点となりますが、これについて東京地方裁判所平成20年7月16日判決は、業者にはロスカット義務があり、ただしカバー取引の成立を条件とすることはできると判断しています。

過失相殺

 

金融商品取引は顧客も一定の利益を目論んで購入することを理由に、裁判例では顧客にも過失があったとして過失相殺が行われることがあります。
しかしながら、そもそもの金融商品の構造が複雑であること、売主と買主との利益の対立構造があること、公序良俗違反の博打行為であるとも考えられることからすれば、安易に過失相殺が認められるべきではありません。
ただ、裁判例においては過失相殺されることが多くあります。
具体的割合については、顧客の能力や取引経過、業者の説明内容によって個別具体的に決定されますが、たとえば大阪地裁平成22年10月18日判決では、顧客が見込んだ利回りに比例するリスクは受け入れるべきとして過失相殺をしたものがあります(顧客が見込んだ利回りが年7%~11%であったとして、満期までの3年間で21%~33%の利益を見込んだということで3割の過失相殺)。

損益相殺

 

顧客が業者と複数の取引を行い、一部は利益が出たが、損失の方が多かったという場合、損失と利益とをどのように相殺するのかが問題となります。
この点、裁判例では、①まず、利益が上がった取引も含めて顧客の全投資金額を損害とし、②損害手数料相当額を控除し、③その金額から過失相殺をし、④過失相殺後の金額から利益を控除する、⑤利益について支払った税金は利益から控除しないという物があります。
具体的には、顧客が業者との間で2個のそれぞれ10億の取引を行い、一つは3億円の利益、もう一つは10億円の損害が生じた。手数料1億、税金1億、過失相殺30%という場合、①20億円を損害とし、②手数料1億を控除して、③19億円から30%を控除した、④12億6,000万円から利益の3億円を控除して税金は利益から差し引かない(利益が3-1=2億とはしない)ので9億6,000万円が損害賠償額とするということです。